天体写真のカテゴリーと難易度

天体写真と一口に言ってもいくつかのカテゴリーに分けられます。
これをある程度明確に把握しておかないと折角望遠鏡やカメラを購入しても撮りたい対象と機材がチグハグになってしまい思うような写真が撮れません。
また同じ対象でもどのように撮影するかで必要な機材が全く違うものになることもあるのでネット検索していろいろな画像を参考に自分が撮りたい写真のイメージを強く持っておくことが重要です。

例えば月。まだ低空の月を手前の山や町並みと一緒に撮影したい(星景写真の一種)のであれば一眼レフカメラやコンパクトデジカメ、或いはスマートフォンでも撮影できます。
ところがこの月を画面いっぱいに全体像が収まるくらいのズーム撮影するには超望遠ズーム機能付きのコンパクトデジカメの手持ちで狙う人もいますが超望遠レンズを付けた一眼レフカメラで狙うのが一般的かもしれません。
更にズームしてクレーターや月面Xを大写しにするとなると焦点距離の長い天体望遠鏡を更にバローレンズなどで拡大する必要があり当然手ブレがひどいので三脚と経緯台という架台が最低限必要となります。当然ながら撮影の難度も格段に上がります。

そしてそして、銀塩フィルムでの写真に拘っているというのでなければカメラはデジタルですから撮影したものを作品にするにはパソコンが必須です。実はこのパソコンも高いハードルのひとつで、例えば日没後から日の出直前までのタイムラプスを作るとなるとスペックの低いパソコンではフリーズしたりシャットダウンしたりしてしまいます。最低でもcorei7、グラボ搭載で32GBのメモリは必須です。下衆な話、値段にすると安くても20万円台以上のものが必要です。
残念なことに私は天体写真を始めた当初パソコンなんて何でもいいだろと全くの無頓着で量販店の4万円程度の展示処分品を購入してしまいました。
とある望遠鏡のフォーカサーソフトを立ち上げるとフリーズしてしまい撮影テストすらまともにできませんでした。
それでもそのソフト以外は何とか動いてくれたので数年間はそのパソコンを使いましたが画像処理はもう少しスペックが上のデスクトップで行っていました。



天体写真のカテゴリー(※個人の見解も含みます)

1.星景写真 
天の川写真が最近は人気。現在はスマートフォンでも撮影可(写りはともかく)。基本的にカメラと三脚とリモコンがあれば撮影可能。撮影方法は赤道儀による追尾(ガイド)撮影に対して固定撮影と呼ばれることが多い。タイムラプス撮影もこのカテゴリーに含まれる(※個人の見解です)。
固定撮影ではパソコンは不要。とりあえず最低限カメラ(バルブまたは10秒以上のシャッタースピードが設定できる機種)と三脚さえあれば何とか撮れる。広角寄りのレンズがあればすぐにでも始められる。
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2.星野写真 
赤道儀という架台で地球の自転に伴って見かけ上移動していく天体を追尾、カメラを長時間露光することで肉眼では見えない星雲などのいわゆるDSO(DeepSkyObject)を撮影する。一度の撮影で様々なソフトウェアを運用するのでトラブルも多く急に難度が上がる。望遠鏡・赤道儀・カメラ・オートガイダーなどをパソコンで制御する。各種ソフトを同時運用するのでパソコンはそれなりのスペックが必要。ちなみにオートガイドソフトや星図ソフトなどフリーのものもあるという点は非常に有難い。
それでも慣れれば撮影そのものはある程度成功する確率が上がる。このカテゴリーで多くの人を悩ませまた楽しませているのは撮影した後の画像処理である。
もちろん良質の写真に仕上げるにはできる限り暗い空・暗い環境で撮影することが大前提である。そのためDSOを撮影するのが専門の人は天気が良くて暗い場所を求めて片道何百キロも車を走らせることもある。また最近では空の条件の良い遠隔地にリモート天文台を設置して自宅から望遠鏡などの機材を遠隔操作して撮影するというプロみたいなアマチュアの人もいるらしい。
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3.惑星・月の拡大撮影
できる限り大口径長焦点の望遠鏡を用いて更にバローレンズやアイピースで拡大(焦点距離を延長)して惑星や月をズーム撮影する。最近では大口径長焦点でもコンパクトなカセグレン系の望遠鏡が比較的安価なので人気がある。動画撮影が基本なので大容量で高速処理のパソコンが必須。赤道儀は積載荷重15kg程度は必要。
また日本は特に冬季になるとジェット気流が上空を通るためシーイングが悪い日が多く惑星撮影には向かない。高精細な惑星像を得るには夏~秋がベストシーズン。
また惑星撮影は星野写真撮影とは違い特に暗い空・暗い環境に拘る必要はなく、大都市の中心部でも目の前で街灯がギラギラ光っていてもほぼ問題ない。わざわざ山の上や人里離れた高原などへ遠征しなくても自宅から気軽に撮れる・楽しめるというのは気分的にとても楽。但し土星木星、最接近時の火星など表面の複雑な模様を捉えるには口径の大きい望遠鏡ほど有利になり(口径30cm以上)、また望遠鏡の価格も口径30cmあたりからケタが変わってくるので要注意。
そして望遠鏡の口径が大きくなると重量も相当なものになってくるので赤道儀もそれなりの大きさのものが要求され望遠鏡と赤道儀だけで普通自動車の新車が買える価格になる(望遠鏡のタイプにもよる)。
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以上のように趣味としての天体写真撮影は大きく3つのカテゴリーに分けられるかと思います。
難易度は当然ながら1が最も簡単で準備すべき機材もとても少なくてシンプル。
一眼レフカメラAPS-Cサイズのものなら手頃な価格で入手できます。
もしあなたが何でもいいからとにかく星空を撮ってみたいと思うならこの固定撮影による星景写真から始めるのが良いと思います。
最近のスマートフォンは超高感度に設定でき10秒以上の長時間露光もできる機種もありますから三脚に固定して天の川を撮ることもできるはずです。

問題は2・3のカテゴリーです。難度はもしかしたら2の方が上かもしれません。赤道儀と望遠鏡とカメラとパソコンだけでは撮れない(工夫すれば撮れないこともない)からです。そして画像処理がとにかく大変(※個人の感想)。3の惑星・月も画像処理は必須ですが星野写真と比べると処理工程はそれほど複雑ではないように思えます。よほどピントを外した場合でない限り写真の出来の悪さはその時の気流のせいにできるし(※個人の感想)。

私は天体写真に10年取り組んできましたがDSOの画像処理はついに自信を持ってこれだ!と言えるまでにはなれませんでした。もちろん個人差は大いにあります。それがなおさら敗北感みたいな感情を増幅させるのです。悲しいです。